相変わらずネタバレ強です。時期的にはエルドランド突入前ぐらい




ガイがその手紙を受け取ったのは、皆とベルケンドの宿に泊まったときだった。
 夜、寝ようとしていたガイの部屋に、宿の支配人がやってきて一枚の封筒を渡してきた。その差出人の名前を見て、ガイの顔は引きつる。
『ヴァンデスデルカ・ムスト・フェンデ』


MEMORY NIGHT


 手紙はガイを呼び出すためのものだった。ベルケンド研究所のかつてヴァンが私室として使っていた部屋に来いと、そこには書いてある。あの部屋への裏口は以前、アイテムを取るためにルークが開けていたのを思い出す。
「でも、一体なぜだ……?」
 ルークならともかく、自分はもう彼と決別している。もう主従関係だろうが、幼なじみだろうが自分とヴァンの間にはもう何もない。そう、もう何も……
 罠かもしれない。だが、行かなければルークに何かされてしまうかもしれない。ガイにとって自分の身よりも、ルークの方が大切だった。ルークには「生き残ることが忠義だ」と格好いいことを言ったが、それが友人で自分にとって一番大切な人となると話は変わる。彼のことは命をかけてでも守らなければならない。
 手紙に書かれている時刻は、もうまもなくだった。悩んでいる暇はない。
 ちゃんと帰れるか分からない。ガイはそこにあった紙に簡単な言葉を書いた。
『ちょっと用事ができたので抜ける。しばらく帰って来れないかもしれないが、後でちゃんと合流する』
 コレだけでは余計心配をかけるだろう。だが、ルークたちには大佐がついている。きっと何かを察して、上手くやってくれるはずだ。

「待っていたぞ」
 研究所の一番奥。レシピやアイテムを手に入れてからは、滅多に立ち寄らなくなった部屋で、ヴァンは待っていた。
 いつものように厳しい顔立ちをしているが、どうしてか殺気は感じられない。腰には剣があるが、いつもの派手な法衣は着ていなかった。
「何の用だヴァン?」
 低い声で威嚇するように言うが、そもそもの迫力がガイには足りない。ヴァンも呆れたような苦笑を浮かべている。
「それで、威嚇しているつもりか?」
 ヴァンがさっと動き、ガイの背後に移動した。ガイは反応できなかった。反応できたところで、何も変わらないような気はしたが。
「ガイ……いや、ガイラルディア様……」
 低く掠れたハスキーな声。その声が思っていたより近くで聞こえて、思わずガイは硬直した。
「ヴァンデスデルカ……っ」
 振り返るよりも早く背後から拘束され、さっと武器も奪われる。奪われた武器は投げ捨てられ、離れた床に軽い音を立てて落ちた。
「久しぶりですね……」
「ん……っ」
 首筋にヴァンの息が触れて、ガイは小さく呻いた。
 女性に触れることができないガイ。そんなガイにだって性欲というものはある。それを解消するためには、男を相手にするしかなかった。ファブレ家の敷地内ではその相手というのも、自然に決まっていた。
「初めて、体を合わせたときのことを覚えてますか?」
 ぎゅっと、まるで閉じ込めてしまうかのようにヴァンが抱きしめてくる。肉厚な胸板が背中にあたって、しばらく触れられていない体には酷だった。知らず知らずのうちに、体が汗ばんできた。
 初めてのとき。それは数年前のファブレ家でのことだ。


★★★★★★★★★


「女性恐怖症?」
 剣術指南の後、ルークが自分の部屋に戻っても、ベンチに座ったヴァンとガイは話していた。ヴァンがルークの面倒を見るようになってからの、いつもの光景だった。
 今日、ガイは自分の体質について話した。女性が怖くて、触られただけで体が震えてしまうこと。幼いときから自分の兄貴分だったヴァンなら、何かいい方法を教えてくれるかもしれない。そう考えて打ち明けたのだ。だが、ヴァンから返ってきたのは
「そういうものは、自分で克服しようとしなければなりません」
 ガイはちょっと俯いて、言葉を続けた。
「克服……しなくても、いい方法はないか?」
「まぁ、今はいいでしょうが、将来に差し支えますよ? 子を持つどころか結婚もできません。その様子だと、まだ女性に触れたこともないでしょうに」
 「うっ」とガイは小さく呻く。ヴァンの指摘どおり、ガイはまだ童貞だ。一応、やりたい盛りの時期なので、女性と性交したくないわけではない。ガイは外面もなかなかの綺麗な男だし、内面もちょっと気障で優しいから、誘ってくる女性がいないわけではない。
「一人でばかり処理していたら、いずれ耐えられなくなります」
「そーなのかな? やっぱ、そーだよな……」
 ガイの気分はますます沈む。どんなに禁欲を自分に課しても、人間としての大切な欲求を無視しつづけるなんて、無理な話だ。
「無理に克服しなくても、一つだけいい方法があります」
「いい方法?」
「はい。女性が無理なら男を相手にすればいいのです」
 ヴァンのいきなりの提案。ガイには一瞬意味が分からなかった。男を相手にするって……考えて一つの結論に到達する。
「な、お前! ルークか!? いくらここの家の奴だからって、そんなことできるわけないだろ!!」
 ガイは既にルークのことを溺愛していた。いくら恨むべきファブレ家の子供であっても、そんな汚らわしい真似はできない。
「落ち着いてください。何もこの屋敷に男が彼しかいないわけでもないでしょう」
「あ、そっか」
 自分の勘違いを恥じながら、他の男を考えてみる。公爵はいかにもガイを手篭めにしていそうだが、彼はガイのことをルークの世話係としか見ていない。それに奥方一筋だ。白光騎士団の連中は自分のことをよく思ってはいないので、酷いことをされそうである。あと男といえば……ガイの視線が自然と隣に座る男を写す。
「どうしました?」
 ヴァンは優しい笑顔を浮かべる。まるで兄が弟を見るような。
「お前って言ったら……嫌だよな?」
 ガイは頬を赤らめながら言った。ヴァンは一瞬黙ったが、笑顔のまま頷く。
「かまいませんよ。あなたが望むなら」
「違う。そうじゃなくて、お前個人としては嫌だろ?」
 そんな手篭めのように扱われるなんて、ガイだって真っ平ごめんだ。ヴァンとガイは幼なじみなのだから尚更である。
 しかし、ヴァンは笑顔を絶やさなかった。
「嫌ではないですよ。あなたの部下としても、あなたの友としても」
「どう……して……?」
 ガイの顔が信じられないものでも見るように引きつる。
「言ったでしょう? 私はあなたが望むなら何でもしますよ。あなたが助けを必要としているとき、私がその肩を支えます」
「ヴァン……」
 改めてヴァンに感激するガイ。そんなにも自分を慕ってくれているのが、嬉しくてたまらない。ガイの中でヴァンはいつまで経っても、格好いい自慢の兄貴だった。
 不意にヴァンの指が、ガイの顎を捉えた。そして、くいっと顔を上げられる。
「少し試してみますか? 相性という奴を」
 低くて、ハスキーで、少し危険を予兆する声だった。

 ガイがヴァンに連れて来れれたのは、ファブレの屋敷の中でも人が到底入りそうもない倉庫だった。ここはいらない家具や大きめの荷物があるため、よっぽどのことがない限り使用人でも入らない場所だ。そして、ヴァンやペールとホドがらみの話をするときにだけ利用することがあった。この部屋の構造上、外に音が漏れにくいのだ。
「……ぅ……ん」
 ガイは箪笥に押し付けられながら、ヴァンの口付けを受けていた。全てを奪い尽くすように熱くて淫らで、ガイは翻弄されながらも夢中になりつつあった。両手はつかまれて背中と一緒に箪笥に押し付けられている。
「はぁ……ヴァン……ぅ」
 舌が歯列をなぞるたび、ガイの舌に絡むたび、ガイは背中を駆け抜けていく震えを止められない。口の端からは唾液が零れ落ちて、顎を濡らしている。
「……ぁはぁ」
 口を離されると、ガイは呼吸を補おうと大量に息を吸った。その所為で、少し咳き込み、目も涙で潤んだ。 「ガイ、あなたはどう呼ばれたい?」
 首筋に喰らいついてヴァンはガイに問う。舌が肌を伝い、ガイはビクンと身をすくませた。そんな自分の呼ばれ方など気にしている余裕はない。
「好きにしろ……っ」
「では、ガイラルディア……キスはお気に召しましたか?」
 ヴァンの片手がガイの手を押さえることをやめ、下に下る。その手が行き着いたのはガイの股間だった。そこは少しずつ熱を持ちかけていた。
「……ぁあっ」
 ガイの着ているものは、大して布の厚いのもではない。形をなぞるように触れられ、ガイは声を上げる。いつもとは違って、それはつやを帯びていた。しかし、ガイは自分が出した声に恥を感じて、もう出さないように開放された手で自分の口を塞いだ。
 ガイの健気な努力にヴァンはクスッと笑う。
「我慢しなくてもいいですよ。ガイラルディア。私以外、誰も聞いていません」
「……でも……」
 お前が聞いてるだろうが……
「ふふっ、どうせ、我慢できなくなりますから」
 いったん、手が股間から離れる。そして、ガイの服のボタンを外し、胸から腹までを露にする。
 綺麗に鍛えられた体に、色づいた胸の飾り。不思議な美があった。
「んぐ……っ」
 ヴァンの顔が更に下がり、その胸の飾りを舐めた。瞬間、ガイは大きく震える。自分でも赤い舌が舐めていくのを見てしまって、動揺を助長した。
 ヴァンも気を良くしたのか、執拗にそこを舐め溶かした。時折、唇で甘噛みしたり、押し潰したりする。
「ん……ぐぐっぅ、何で……っ?」
 ガイの口から漏れた「何で」は二つの意味合いを持っていた。一つはどうしてヴァンがそこを舐めるのか。性欲処理だけだったら出して終わりでいいはずだ。必要以上の快感は要らない。もう一つはどうしてそこで快楽を感じるのか。舐められているだけなのに、下のものに意識が集中していく。
 どうしてなのか、どうしたらいいのか。ガイにはその答えが見つからない。
ガイのズボンが一気に下ろされた。成長しきったものが外気に、そしてヴァンの目にさらされる。
いきなりヴァンがひざまずいた。ガイは立ったままなので、丁度顔が股間の前にきて、ヴァンはガイのものに口を寄せた。
「ちょっ、ヴァン!!」
 初めて他人の口内に入れられて、ガイは激しく抵抗感を感じる。
「やめろって……俺は、……あぁぁぁっ」
 口を押さえるのも忘れて、ヴァンの頭を引き剥がそうとしたが、弱いところを責められ声が上がってしまう。同時にヴァンの髪の毛をつかんでしまい、まとめていたものが切れた。
「……くっ」
 長い髪がばさりと敏感になった内股に触れる。少し意識がそちらへ持っていかれるが、ヴァンの舌使いにすぐ引き戻された。
「はぁ、はぁ、あぅっもう、も、で……ぁあっ!」
 弱い裏筋をなぞり全体的に擦られたり、鈴口に差し込まれたり。ガイの声もどんどん高く甘くなる。強すぎる悦楽に理性が消失したのか、自分から腰を動かし、手でヴァンの頭を押し付けようとする。
「ヴァンっ……ヴァ、ヴァンデスデルカァぁぁっ」
 一際、高い声を上げてガイは仰け反り、己の欲望を勢いよく吐き出す。ヴァンはそれを飲み下し、口を離すと含みきれずたれてきたものを拭った。
「……はぁ……はぁ……ヴァン……」
 支えるものがなくなり、ガイはズルズルと床にへたり込む。快感の余韻を堪能しているので、目の焦点が合わず、口元には小さな笑みも浮かんでいた。
「大丈夫そうですね……では、舐めなさい」
 何処となく命令口調で、ガイの唇にヴァンの人差し指が押し当てられた。ガイは抵抗することを忘れてそれを舐め始めた。
「……はぅ……ふくっ」
 指がしっかり濡れると、指が引き抜かれた。ヴァンの視線はガイの股間に向く。ガイは膝を立てて座っているため、そこは後孔まで丸見えだった。
「ひやっ……な、何を?」
 指が後孔に差し込まれる。ヴァンはワザと指を動かして、その存在をガイに知らせた。
「痛いほうがいいですか? それとも優しくしましょうか?」
 そう囁いて、ガイの耳を口に含む。それだけでもイったばかりのガイに火をつける。
「ひやぁっ……っや、わかな、いっ」
「初めてですし、優しくしましょうか……」
「ぁうごか、すな……」
 ガイの声を無視して、指は動き始めた。
始めはゆっくりだったものが慣れてくると激しく動き、指の数も一本ずつ増やされる。
「やっ! おかしいぃ……ぃ!」
 圧迫感や嘔吐感があるもののガイはその動きに溺れる。途中で見つけられた前立腺を擦られ、頭がどうにかなりそうな快楽を感じた。
「すごい……締め付けていますよ」
 中の指が三本になる頃には、ガイは泣いているような上ずった声を上げて、身悶えていた。ひっきりなしに聞こえる水音は耳を犯し、イったばかりなのに、雄も熱く濡れる。
「はぁぁああっ、ん……っもちいっぃ!」
 もっと深く抉って欲しいと願わずにはいられなくて、体の熱は上がる一方だ。性器をしごかれるのとは違う、精神を直接、刺激されているような快感。何かすがるものが欲しくて、ガイはヴァンの背中に両腕をまわした。
「ヴァン……ヴァ、ぁあっ」
 競りあがってくる熱に身を任せようとしたそのとき、指がまとめて引き抜かれた。
 急に奪われ、ガイの目は現実を理解できずに中を彷徨う。後孔ももの欲しそうに開閉を繰り返す。
「ヴァ……ン……?」
「今、差し上げますから」
「え? あぁっ」
 熱く、指とは比べらないものがそこにあてがわれた。ガイがそれを理解できるよりも早く、
「ひぁぁぁぁぁぁっ!」
 一気に中を貫かれた。
 わけの分からない圧迫感、違和感、恐怖感、全てがガイを追い詰めて、青い目から涙が零れ落ちる。それに引き裂かれるような痛みにもさいなまれる。慣らしたとはいえ、本来入れるべきではないものが、そこに入れられたのだ。痛まないはずがない。
「やだっぁぁあっ!……抜けっ、や、抜けぇっ!」
「……くっ締まるっ」
 ガイの体に力が入り、意識しなくともヴァンを締め付ける。その締め付けに逆らうようにヴァンは体を動かした。内壁が擦られるたびに、痛みと、そして熱を発してガイの息も詰まる。
「あぁっ、あぁ―――――っ!」
「……ん、力を抜きなさい。ガイラルディア」
 名前が呼ばれ、痛みで力を失ったモノをヴァンの手が刺激する。そうすると痛みが快感に誤魔化される。絶えられない痛みではなくなるが、その代わり別のものがガイを苦しめた。
「がっ! ぁああっそれ、それがぁぁぁっ!」
 脳を麻痺させる快感が、しごかれる雄と抉られる内壁から這い上がってきた。ヴァンとの接合部が焼け付くように熱くて、そこからドロドロに溶かされているかのように錯覚する。
「力を抜けば、楽になる……」
 耳元でゾクッとする声が囁かれる。ガイはその言葉に従って、自分の力を抜こうとした。
「上手です……っ」
「そ……そなっ、ひぃぁああっ!」
締め付けが緩んだのを見計らって、ヴァンの動きが激しくなった。ガイの腰を持ち上げ、もっと深くまで抉る。ガイは箪笥とヴァンに挟まれて、泣いているような声しか上げられない。もう、快感のことしか考えられず、より高みを目指そうとヴァンに口付けを求める。
「……ぁふっ……気もちぃぃ……いいっ!」
「私もです……すごくいい……」
 ヴァンのものが最奥を貫いたとき、ガイの視界が真っ白になる。苦しくて、心地いい無の世界が広がる。
「うぁああああああ――――!!」
「……く……」
 熱い飛沫を体内で受けながらガイは自分も解放した。それと一緒に意識までもが、深い深淵に飲み込まれていった。


★★★★★★★★★


「思い出していましたか?」
 背後から手をまわすヴァンが耳元に囁く。
 あのときは本当に気持ちよくて、頭がどうにかなりそうだった。そして、その日からガイとヴァンの関係は続いてきた。ルークの剣術指南が終わるたびにあの部屋に入って、誰にも見つからないように体を繋げた。 ガイが旅に出てからはそんな暇はなかったので、最後に触れ合ったときから、かれこれ一ヶ月以上は経っている。
「私は……あなたが欲しい」
 服の上からヴァンの手が胸をもんでくる。
「は……なせ……」
 指先が飾りの位置を探し当て、刺激してくる。薄い布地越しの刺激で、ヴァンに慣らされた体にはもどかしさがあった。
 駄目だ……と思う。これ以上されたら、自分はこの男に体を求めてしまう。
 ガイはヴァンの腕から逃れようともがいた。
自分がすべき行動を想像する。自由な両腕でヴァンの手を引き剥がし、手の力が緩んだ隙に逃げ出して、床の剣を取る。そして、刺し違えてもヴァンを殺す。愛しい人だからこそ、せめて自分の手で……
いざ行動に移そうとした。しかし、
「大人しくしろ」
 いかんせん相手はオラクルのトップ。ガイの動きなど読まれ、床に引き倒される。
「うわぁっ!」
「あまり私を怒らせないで下さい。ガイラルディア様」
 仰向けに転がったまま両手に手錠がかけられ、机の脚に繋がれた。近づいてくるヴァンを離そうと足をばたつかせるが、その両足程度で何とかできるわけがない。
「来るなっ! 来るなぁぁぁっ!!」
 半狂乱になって、ガイは叫んだ。まるでヴァンが女にでもなったかのように、バタバタと暴れ、喚く。無様だなどと考える余裕もなかった。
「怒らせるなと言っている」
 ヴァンの押し殺した声。ガイは目を見開く。ヴァンは腰の剣を引き抜き、切っ先をガイの顔に向かって突きつけていた。
「いいぜ? 殺せよ。どうせアンタと俺は敵同士だ。犯されるぐらいなら、殺された方がましだ!」
 切っ先が更にガイの頬に触れ、皮膚を薄く切り裂き、肉も少しだけ切られる。血が流れ、チョーカーがその血を吸い込み黒く染まった。しかし、ヴァンはそれ以上、剣を進めずにガイから引く。
「ヴァン?」
「敵同士なら、あなたの命令を聞かなくてもいいですね」
 ふっと男らしくて官能的な笑みを浮かべる。そしてガイの両膝をつかみ、その間にわって入った。
「拘束された姿もお似合いですよ」
「この……ヤロっ……いっ」
 ヴァンが片膝をついてガイに顔を寄せる。大きな掌がガイの顎を鷲づかみし、無理やり頬をヴァンにさらすような体勢にする。
「この体を血で染めれば美しいでしょうね」
「ヴァン……つぅっ」
 舌が流れた血をなぞり傷口に唾液をすり込む。たったそれだけなのに、ガイは自分の体が震えるのを止められなかった。不覚にも気持ちいいと思ってしまった。
「離せっ……嫌だ!」
 ガイは情けなくて顔を背けようとするが、ヴァンの握力に勝つことができない。
 傷口からまだ零れていない血まで舐めとって、そのままガイの口に喰らいつく。
「……ぐ……ぁう」
 自分の血の味がする。舌を噛み切ってやりたいのに、顎を押さえた指がそれを遮っていた。その間も獣のような口付けは続いて、ガイを快感が支配しようとした。股間の方は膝がそこに喰い込んで揉みしだき、熱を高めてくる。
「……ん、はぁ、は、離せぇ……離せよぉっ」
 服が全て肌蹴させられる。ズボンも脱がされる。
「やめろっ……やめてくれっ!」
 ガイがどんなに叫んでも、ヴァンは止まらない。
「やめっ……ひぃぃぃっ!」
 乳首に噛み付かれてガイは悲鳴を上げる。
「痛いっ……ヴァン、痛い―――っ!」
 昔はあんなに優しかった指が、濡れてもいない後孔を貫く。
 強姦のように抱かれたこともあった。だが、これは本当の強姦。愛も優しさもないただの犯すだけの行為だ。
 ガイの目からは涙が流れる。苦しかった。痛かった。悲しかった。そして寂しかった。
「いやっヴァン、いやぁぁっ!」
 大して慣らしてもいないのに、指はすぐ抜かれる。代わりにあてがわれるものは、前と代わらず熱くて、大きくて……
「やぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 無理に引き裂かれて後孔からは血が零れた。ガイはあまりの痛みにイヤイヤと壊れたように首を横に振る。だが、ヴァンに抱かれ続けてすっかり男に抱かれる体になってしまった今では、その痛みさえも快感に置き換えることができた。
「このぐらい痛いほうがいいでしょう?」
「ヤ……痛い……痛いっ!」
「こっちはこんなによがっていますよ」
 ヴァンが言うとおり、ガイの雄は昂ぶっていた。まるで涙でも流しているかのように、透明な液がその形をなぞって流れている。
「久しぶり、ですからね」
「あああぁっ!」
ヴァンの手はそこをつかみ、堰き止める気なのか抑える。そして、激しく大きく動いた。
痛みと悦楽を同時に感じて、ガイは泣き喚いた。それにイきたくてもイけない状況の為で、理性と抵抗する気力まで奪われていた。
「やっ……っヴァンっがぁあああっ! イ、イかせ……ぁああぁっ!」
「あな、たの命令は、くっ、聞きません、よ」
 しばらくかき混ぜていると、無理矢理だったヴァンの動きもスムーズになってくる。前立腺を責め立てるように突き、もっと快楽を与え、ガイを苦しめる。ガイはただただ嬌声を上げることしかできない。身悶えるたびに机と手錠が金属音を立てた。
「ぐ……ガイラルディア……っ」
 ヴァンが低く呻く。同時にガイの中に欲望が叩き込まれた。
「ひぃいぁぁぁぁっ!」
 抑える指が外れ少し擦られただけで、いとも容易くガイも遂げ、高い声を上げながらブラックアウトした。


★★★★★★★★★


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