血酒


昨晩共に飲んだ酒の名残りは、血の味にしかならなくて
昨晩初めて見たであろう貴方の笑顔が
私の中で崩れていく
昨晩まで、生きていた人



泣き叫びたいのを必死に抑えて、
彼の名前を呼びたいのを必死に抑えて、
ただ黙って唇を噛んでいる。
血の味が、口に広がる。
これは、私ができる貴方への償い。


貴方の為の葬儀は、ない。


一人が好きだった。
話すのはあまり得意ではなかった。
笑うのも、得意ではなかった。
ただ、大切な人達を想っていた。
大切な人達を守る為に、彼は方天戟を振るった。
それが彼なりの、優しさだった。
一人でも多くの人を守れるように、
一人でも多くの人を殺していった。
彼は笑わなくなった。
表情なんて、要らなかった。

彼は、沢山の人を殺していった。
彼は、もっと守れるように、殺せるように……

彼は、恐れられた。
敵も、彼の大切な人達も。


そして、私も。



彼は、独りになった。

私は、彼を守れなかった。




「敵襲!敵襲!」
その言葉に私はすぐに反応した。貴方が与えてくれた鉤鎌刀を持ち、戦場へと向かった。
貴方を殺した者を守る為に。
本当は、貴方を守るべきだったんだろうけど
そんな思いが浮かぶ。
ここは戦場。
さっきまで、何もなかった所。
まるで、貴方のようだった。
貴方の死に方のようだった。



目の前に、剣を持った兵士が5人。
敵はひと振りで倒せると、貴方自身が言っていた。
人をどうやったら多く殺せるか、教えてくれた。
力の入れ方、敵の隙。
全てを見越した、戦い方。
思いきり、横へ薙ぎ払う。
目の前の兵士は、力なく膝を折る。
鉤鎌刀が、血で濡れた。
貴方のように、血で汚れていった。



首が、落ちた。
彼奴は化け物だ、これぐらいで死ぬものか、と
その後も、何度も斬りつけられた。
その瞬間は、見れなかった。
貴方をおいて、貴方を殺した者に仕えた私に。
涙が、出なかった。



張繍軍の敵兵は、確実の数を減らしていったが、
同時に自軍の兵士も、少しずつ数を減らしていった。



兵士が十数人、私の周りを囲んだ。
兵力は、落ちつつある。体力も減ってきていた。
それでも鉤鎌刀を円をえがくようにして振り回した。
半数ほど当たり、残りは怖気ついて逃げていった。
刹那。
矢が、左腕をかすった。
後ろからの不意な攻撃だった。
少しして、痛みが走る。
自分を狙った弓兵を殺し、周りに敵がいないか確かめながら
布を割いて止血しようと応急処置を施した。
かなりの人を殺した。
かなりの血を浴びた。
彼とまではいかないけれど、私も沢山の人を殺していた。
ならば、何故、彼は殺されて、私だけが生きているのだろうか?
何故、彼だけが責められるのだろうか?
わからない
団体で攻めてくる兵士達よりも、孤独になってまでも戟を振るっていた
あの人のほうがどんなに勇敢だっただろう?
気がついたら、笑っていた。
きっと醜い笑いなのだろうと、自分でも分かった。
手にしていた鉤鎌刀が、音を立てて、手から滑り落ちた。
傷の所為もあるのか、もう戦う事ができなかった。




数人の兵士が、取り囲む。
膝をついた、私を。
「……………………」
言葉も、出なかった。
言葉なんて、要らなかった。




目を閉じて、また開く。
こんなに瞬きがゆっくりなものだなんて、初めて知った。
貴方と飲んだ、酒の味を思い出した。
月に照らされた、初めて見せてくれた貴方の笑顔が、浮かんだ。







貴方が、助けに来てくれたのかと思った






兵士が、1人、表情を変えた。
恐怖と、苦痛の色に。
それは、朱だったか、黒だったか。もしかしたら黄金かもしれない。
恐怖ほど、自分<そんざい>を感じることはない。
苦痛ほど、楽なものはない。
本当に辛いのは、その後。
兵士が、倒れていくのが妙にゆっくりに思えた。
倒れた先から見えたのは、
「大丈夫でござるかっ?!張遼殿!」
1人の武人。
その声が、よく響いた。
数名の兵士は、さっきまで同僚だった兵士を見て、逃げ出していった。
武人……徐晃はその後姿を一瞥しただけで、私に駆け寄った。
彼が生きていたのなら、敵だったはずの人。
彼が殺され、私が新しい君主に仕えるまでは、敵だった人。
「腕に怪我をしているようで……?」
よほどの心配性なのだろうか、私の顔を覗き込みながら聞いてくる。
「大丈夫、だろう。かすり傷程度であるから」
「毒は?塗られてはいなかったのですか?」
私はただ頷いた。会話をした事によってかなり安堵していた。
「そうでござるか……
 敵の軍は撤退を始めた様子。戦は終わり申した。
 殿も無事のようでござる」
徐晃は心底嬉しそうに言った。
「傷の手当てをしなくてはなりませぬな。
 早く本陣へ帰りましょう」
「……ああ。よろしく頼む……」
徐晃に、感謝しながら笑った。
戦場には似合わない、さっきの笑みとは違った笑いを。
徐晃も、共に笑ってくれた。
ちょっとぎこちない、あまり造らないのだろう、その笑顔を
私に見せてくれた。
重たそうな斧を軽々担ぎ上げ、私に手を差し伸べる。
私は素直に、その手をとった。



貴方に、似ていた
雰囲気も、唯一見せたその笑顔も



貴方は怒りますか?

貴方を殺した者に仕える事を

貴方は怒りますか?

貴方に雰囲気がとても似ている、あの武人を

貴方の代わりに想うことを

貴方は許して下さるだろうか?

貴方と飲んだあの酒を

あの武人と共に飲み交わす事を

記念すべき第1作目が呂布&張遼&徐晃です。
非っ常に短いくせに読みにくい作品でごめんなさい・・・
『あなた』といれて変換する時、時々キー押す順番が狂って『あんた』となった時。
物凄く愉快でした。
張遼、あんた呂布の事『あんた』呼ばわりしていいのか?

うちのサイトは、徐晃受けです。この小説も張遼×徐晃の発端です。
徐晃受けのサイト、あまりないものですね。
ならば私達が創ろう、という事でこれからも徐晃受、書いていきたいと思います。
・・・33歳なんだっけ?徐晃さん・・・




と当初は上記のように書いておりましたが……
今や凄い量だなオィ(笑)徐晃受けサイト。
徐晃は人気があるのでマイナーとは呼べなくなっちゃいましたね。
ということで時々書くことにして、その他マイナーカプ書きますか!!





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