それは他愛もないことから始まった


 夜、ルークたち一行が宿屋でくつろいでいるときの男部屋でのこと。
「いつっ……」
 ルークの頭にいきなりの頭痛がルークを襲った。この感じはすぐにアッシュだとルークは気付く。それと同時に他の男二人も反応する。
「どうしたルーク!!」
「また、あのデコですか?」
「あぁ、って、ジェイド、デコだなんて言ってやるなよ……」
『誰がデコだ! レプリカ!』
 アッシュの怒声が頭の中に響く。ルークは困り顔で返事を返す。
『わりーわりー、で、何か用?』
『今から、そっちへ行く』
『へ? 今? 何で……』
 聞きかけてルークは気付く。夜。アッシュが今から来る。つまり……
『無理! 無理無理! 今日はみんなと同室なんだ!』
『うるさい、迎えに行くまでだ』
『ちょ、アッシュ!』
 プツンと通信を一方的に切られた。ルークはずぅぅぅ〜んと落ち込む。実はルークは自分とアッシュの関係は誰も気付いていないと思っていた。それもこれも、仲間たちがルークを傷つけないためにあえて触れてこなかった所為だが、今アッシュに来られてしまったら二人の関係がばれてしまうと、ルークは勝手にピンチに陥っていた。
 その落ち込みを男二人は勝手に思い込む。
「ままままままっまさか! また酷いこと言われたのか!?」
「あのデコ…………ふふっ」
「ち、違うってば〜ただ、ちょっとこっちに来るって……ぁ」
 ルークが行った途端、ガイは悲痛な表情になり、ジェイドは引きつった笑みを浮かべる。そして、そんな雰囲気そっちのけで窓ガラスを叩く音。開いたカーテンの向こう、むっつり顔のアッシュがいた。
『おい、レプリカ、開けろ』
 アッシュがルークに回線を繋げるのと、ガイとジェイドがカーテンを閉めるのは同時だった。
「デコに俺のルークは渡さん……」
「おやぁ? 外のデコは見間違いでしたね」
 妙に息の合っている二人の背後では、激しくガラスを叩く音と、「くぉらぁ! 開けやがれ、屑が!!」と喚くアッシュの声が響いたと言う……
          ■□■
 そんなこんなでルークにドアを開けてもらって、ようやく中に入れたアッシュ。しかし、
「ワザとか? それはワザとか?」
「いえいえ、たまたまここに立ちたくなったんですよ〜」
と、窓際に立ちはだかるジェイドが笑顔で言い、
「そうそう、たまたま立ちたくなったんだよ、ここに」
と、ドアに立ちはだかるガイも笑顔で言った。
「どころで、アッシュ。俺たちに何の用だい?」
「てめぇらなんぞに用はねぇ。用があんのはレプリカだけだ」
 窓もドアもふさがれて、仕方なくアッシュはルークとベッドに座っていた。他の男二名からしてみれば、そうやって隣同士に座られるのすら逆鱗ものだったが、ここを動いたら最後、ルークは憎っきアッシュに持って行かれてしまう。背に腹は変えられなかった。
「ほほーう、ルークにですかぁ? 一体どんな用でしょうねぇ?」
「てめぇらには関係ねぇ」
「まさかとは思うが俺の可愛いルークにあーんなこととか、こーんなこととかしにきたわけじゃないだろうな?」
 ガイが笑顔で抜刀。
「そんな、アッシュに限ってあーんなことこーんなことしに来るわけないですよね? デコはもっと大切な御用がありますよね?」
 ジェイドも笑顔で槍を出す。
「これを越えなければ、俺に春はねぇ! その勝負、受けて立つ!」
 アッシュも対上がり抜刀。
「ちょ、ちょっと、皆?目がマジ……と言うか、誰かとめてぇぇぇぇ!!」
 三つ巴にはさまれてルークは叫びを上げた。すると、物凄い偶然(?)が起きた。
『助太刀いたーす!』
 窓からピオニー、ドアからヴァンが突入してきて、それぞれジェイドとガイを拘束した。
「な、陛下!?」
「うわっヴァン!!」
 こうして攻め男の利害が一致して、夢(?)の共演が果たされたのだった。
「離して下さい、陛下! 私にはルークを守るという重大な任務が!」
「やだやだ〜ジェイドに命令する! 今夜は俺と来い」
 抱きついてくるピオニーの腕から必死に逃げ出そうとするジェイドと、ジェイドに頬ずりしまくるピオニー。
「離せ! ヴァンデスデルカぁぁぁ!! 離せぇぇぇぇぇぇ!!」
「な、なりません。たまには共に夜を……」
 「離せ」と連呼しながらシャクナゲを振り回すガイと、攻撃をかわしながらガイを抑えるヴァン。
 そんな2組を見て、ルークはぽかんと口を開けた。
「も、もしかして……お前らって……」
「知らなかったのかルーク?」
 ドサクサにまぎれてルークを後ろから抱き寄せたアッシュが言う。
「あいつらは出来てるぞ」
「で、出来てたのか……?」
           ■□■
「にしても物好きだよなあんたら」
 アッシュの一言に、ピオニーとヴァンが反応する。
「物好きとはしつれーな! これでもジェイドにだっていいところあるんだぞ!」
「これでもって……あなたの方が失礼ですね……」
「それに、子供過ぎるのもどうかと思うけどなぁ」
 ピオニーが言って、アッシュが睨みつける。
「どういう意味だ?」
 ピオニーは嫌がるジェイドの頬にキスしながらニヤニヤと答える。
「ほら、大人の恋って奴? 子供の恋はもう卒業。押したり引いたりの恋の駆け引き。お前らには出来ねぇだろ?」
 「ぐっ」とアッシュとヴァンが呻く。ルークはお子様なので押せば押すほど押されていく。それはそれで楽しいが、たまには抵抗も欲しい。ガイも恋の駆け引きよりも、ルークを追いかけるのが忙しくて、引いてばかりだ。
「いっつも冷たいくせに、たまに積極的になられると結構いいぜ〜男を楽しませてくれる」
「男の楽しませ方ならガイラルディア様も負けていない!」
 そこに割って入るヴァン。ガイにいたっては、真っ赤になって何も言えなくなっていた。
「最初は嫌がって、だんだん命令してきて、最後にはおねだりまでする。上のものが下のものにおねだりするのだぞ。いいじゃないか下克上って!」
 「ちっ」とアッシュとピオニーが舌打ちする。ルークはおねだりしっぱなしで、可愛いが段階というものがない。ジェイドはピオニーの部下なので下克上なんてない。
「しかも、しっかりしていた言葉がだんだん乱れて、舌足らずになるのだぞ!」
「ふははは、その程度のことで満足してんのか?」
 更にアッシュが入ってくる。ルークはわけが分からず、他の男たちをぐるぐる見回していた。
「俺のルークは可愛い声であんあん啼くんだぜ! 言うことは何でも聞くし、何より欲望に忠実なんだぞ!」
 そのポイントは男二人に大ダメージ。二人は大げさに仰け反り、無意味に『ぐはぁっ』と声をそろえた。やはり、ルークの可愛すぎる嬌声や、乱れまくるところには勝てない。
「なぁ、旦那……アンタって……」
「言わないで下さい、あなただって触れられたくないでしょう?」
「マジ……ハズイ……///」
 残りの三人は顔を赤くして、馬鹿三人から目線を逸らした。
「っと、こんなことしてる場合じゃねぇ!」
 そう叫んだアッシュはルークを担ぎ上げ、
「ご協力感謝する! 共に良い夜を!」
「おうおう、楽しんで来いよ〜」
と、ピオニー。
「無理はするなよ〜」
と、ヴァン。
 そんなわけで、なんとものんきな声に送られて、アッシュは窓から脱走したのだった。
                         つづくかも?







SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送