※注
1、ジェイドが喘ぎます
2、かんなり、ネタバレです
3、弩下手です
4、自分的には長いほうです

以上のことを確認の上、読むかどうかは決めてください







グランコクマに戻ってきての自由行動。ジェイドは執務室で資料を調べようと思っていた。しかし、ふと宮殿が目に入ると、引きずり出されるように、一人の男が思い浮かぶ。
 別に彼に用事があるというわけではないが……
 以前にまた来るように言われていたし、ついでに寄るぐらいなら。あの熱い氷とでも言うべき青い目を、見に行くぐらい許されるだろう。誰に許されるのかはさておきだ。


<燃える氷>


「ジェイドは今日も可愛くないな」
「褒め言葉として受け取ります」
 部屋を訪ねてきたジェイドにピオニーは茶まで用意させて、嬉しそうに招き入れてきた。そして、気持ち悪いぐらいの笑顔で「どうしたんだ?」と聞かれたので、こっちも薄気味悪い笑みを浮かべて、「命令でしたから」と切り返した。予想通り、ピオニーの嬉しそうな顔が一気に冷めて、先の可愛くない発言。
 それでも気を取り戻したのか、ジェイドの手をとって、じっと見つめてくる。
「で、この後は何か用事あるのか? ないよな? ないと言えよ」
「いえ、あります」
 また笑顔で切り返すと、また表情が冷めてがっくりとする。こんなところは子供の頃から変わってないな、とジェイドは少し羨ましく思う。自分も子供のように振舞えたらいいのに。子供の頃から子供ではなかった自分には無理な話だ。
「なんだよぉ〜前だって、訪ねてくるだけで抱かせてくれなかったしぃ、ご無沙汰なんだぞぉ?」
「手を離してください。お茶をいただきたいのですが」
「でもって、俺との情事より大事な用事とは一体なんだ? 大したことじゃなかったら許さん……」
 離してくれと言ったのに、手はしっかりと握られたままだ。ジェイドが軽く溜息をついて、この後は資料を調べることを告げると、その手に力が篭った。
「なーあんだ、その程度かよ」
 しょぼんとしていたのに、一気に元気を取り戻すピオニーをジェイドは内心「単細胞」と言っておく。
「その程度なんかじゃないですよ。とぉ〜っても重要なことです」
「お前に重要でも、俺には重要ではない。と、言うわけで来い」
 握られた手を引っ張られて、ブウサギの待つ寝室へと引きずられそうになる。このままあのドアの向こうへ行ってしまえば、なかなか開放してもらえなくなる。それは困る。非常に困る。
「ま、待ってください。お茶をいただかないと」
 だが、頭の中の全てを皮肉的に見る思考が、自分のことを嘲笑っている。「本当はこうなることが分かっていて来たくせに」「こうなることを望んでいたくせに」
――そう、なのかもしれませんね。
「そんな茶、飲まなくったって別のもん飲ましてやるよ」
「ははは……」
 早速の変態発言に、ジェイドは苦笑いしか浮かべられなかった。


■□■


それから大して時間がたったというわけではないのに、ジェイドは服を乱され、ピオニーもほとんど半裸状態だった。そして、ジェイドはピオニーの下に顔をうずめ、奉仕を強要されていた。
「……ふ、く……っ」
「やっぱり、お前は上手いな」
 普段から耳に残るような声をしているくせに、今は掠れて余計ジェイドの体に響いてくる。繊細さの欠片もない手の平は何が楽しいのか、ジェイドの眼鏡を弄んでいる。
 舐めるたびにピチャピチャ音がして、含んだものは成長する。同じ男だから弱いところは熟知しているし、長い付き合いなのでどうすれば喜ぶのかも嫌と言うほど覚えた。唾液だけではない湿り気も増してきて、独特のにおいがした。
 しかし、それよりもジェイドが気になっていたのは……
――サフィールが見てるし……
 ピオニーのブウサギは愛玩用なので臭いと言うほど臭いはしないし、ブウサギなりに感じ取って近づいては来ない。それでもやはり気になる。
「ブウサギが気になるか?」
 ジェイドの心情を読み取って、茶化すようにピオニーが言った。ジェイドはちらりと目線を上げて、燃える氷を見返す。
「……気にならないほうが、おかしいでしょう?」
 いったん口を離して、濡れた唇で言葉を紡げば、罰でも与えるかのように頭をぐっと押し下げられた。
「止めんじぇねぇよ」
 口にさっきまで舐めていたものを押し付けられて、仕方なく再開する。
「……っ」
 低い呻きと一緒に口の中に欲望を注ぎ込まれた。いつものように飲み下せば、すぐに唇を求められる。強がりは言う気はないので、上手だと認めてやる。欲望を駆り立てる大人の口付け。
「あなたが……嫌いです……」
 口を離されて、ジェイドはそう告げた。
 対して、ピオニーは余裕の笑みを浮かべるだけだ。
 この男は危険。出会ったときから気付いていた。何でも覆いこんで飲み込んでしまう闇、いや光。自分のように闇を生きる者が、一度触れてしまえば、全て焼き尽くされる。囚われて、支配されて、自分が自分でなくなっていく。それが怖い。
 だから、嫌いだ。あの燃える氷が。
「嫌いでいいさ」
「男なんて、わかい子ならともかく親父を好きにはなれません」
「ルーク? ガイか?」
「さぁ、どうでしょうね」
 ふっと笑った唇を割って、無粋な指が入ってくる。「舐めろ」と言われる前に、その指に舌を絡めた。焼き尽くされるのは怖い。だが、「触るな」と言えばベタベタ触り、「舐めるな」と言えば唾液まみれになるまで舐めてくる幼なじみを止める手段なんてあるわけない。インディグネイションでも死にそうにないし。
 それよりも、拒絶した後の仕返しのほうがもっと怖かった。
「その顔いいな」
 男の指をくわえる三十代の男の顔を褒められても、正直まったく嬉しくない。
「うわぁ〜すんげぇ可愛いぃ」
 それが伝わって、わざと可愛いと連呼された。
「このまま指噛んでもいいんですよ?」
「噛めるもんなら噛んでみろよ。ただーし俺も噛むからな、コレ」
 ピオニーのもう片手がジェイドの足の付け根をなぞり、モノを握り込む。そこは少しだけ昂ぶり始めていた。
「たく、俺の舐めるだけでこんなにしやがって……淫乱じゃねぇか」
「陛下、脱がす際のあの前戯は何だったんでしょうねぇ?」
「前戯? そういやそんなこともしたなぁ」
「何が……んくぅっ」
文句を口にしたかったが、その前に口から指が抜かれ、後孔に捻じ込まれた。しかも、いきなりでジェイドも声を出しかけてしまった。それでも何とか堪えた彼の耳に、舌打ちが聞こえる。
「ち、あんあん喘ぐかと思ったのに……」
 ジェイドはとりあえず、変態な幼なじみに冷たい視線を送っておいた。せめてもの抵抗として……


■□■


「……はぁ……ぁ」
 耳を塞ぎたくなるような水音と、誰の声だか考えたくもない漏れ出る喘ぎが部屋に充満していた。
「何だよ、もっと喘いだっていいんだぜ?」
 反論したくても、今、口を開けば相手の望む喘ぎしか出ない。自分の喘ぎが耳に心地よいものでないことは知っている。嫌がらせで聞かせてやってもいいが、何年も前に捨てたはずのプライドがちらりと姿を見せる。
「ほら、ジェイド」
「……くっ……」
 グチュリとひときわ派手な音をさせて、ピオニーが大きく動く。接合部が焼け付きそうになって、体が仰け反った。
「へ、いかぁ……っ」
 駆け抜けた快感に、我慢し切れなかった声が宙を舞う。軍人のものとは思えない繊細な指がピオニーの背にしがみつく。そこは汗で濡れていた。快感を求めているのは自分だけじゃない。不思議な安心感。
「ジェイド……もっと、喘げ」
 耳元で囁かれる睦言はいつの間にか、媚薬の効果も発揮していた。いつも体温が低いのに今は体全体が熱くて、白い肌もほんのりと赤みが差していた。必要以上の熱をどうにかしたいのに、どうにもできない。何が混じっているのか分からなくなった液体が、体を汚して、ピオニーを誘う。
 普段は女王様のような雰囲気を持つ者の、このような醜態は非常に扇情的だった。
「ふ、ああぁ……っいか」
「何? もう限界?」
 張り詰めた雄。それに絡みついた指が、ぐっと締め付ける。
「ちょっと我慢しろ。一緒にイクから」
「……ぁはいっ……」
 ラストスパート。二人の理性がドロドロに解け、その役割をなくす。ピオニーの口からは予期せぬ言葉が漏れる。
「好きだ……ジェイド……っ」
――好き……?
 ジェイドには一瞬意味が分からなかった。意味が分からないまま、何か心地よいことをいわれたような気がして。
「ジェイド……愛してる」
 その心地よさに身を沈めようとして、さっと冷たいものが走っていく。そしてジェイドの口をつくのは拒絶の言葉。
「き、らいです」
「あぁ、愛してる」
「あな、たが……嫌いです」
「お前が好きだ」
「きらぃ…ぁ…で……」
 もう、目の前の男と快感のことしか考えられないのに、唇だけはかたくなに「嫌い」と紡いだ。だが、皇帝はそんな言葉を全て覆うように「愛してる」をただ繰り返してくる。
「愛してるんだ……お前を」
 ぎゅっと抱き寄せられて、横幅のないジェイドは容易くピオニーの腕の中に閉じ込められた。ジェイドもそれに答えるように、広い背中に強くしがみつく。
「きらい……で、す……」
 凍える炎が閉じられ、端から何が原因なのか分からない涙が、一筋零れた。その一筋を唇でなぞって、燃える氷も閉じられる。
 二人で抱き合って、競りあがってくる熱にその身を任せた。ここが何処で、自分たちが何もので、これがどれほど罪深き行為なのか、そんなことは全てどうでもいい。
「嫌い……ぃぁあっ!」
「好きだ……っ」
 言葉がその意味をなくして、混ざって、天高くに昇っていった。それとも地中深くに堕ちて行っていたのだろうか。


■□■


ジェイドは目を覚ますと、すぐに自分の状況を確認した。どんな場所であっても、警戒を怠らないのが軍人としての勤めだ。
 とりあえず、部屋は暗くて夜だと判断する。音は穏やかな寝息しか聞こえない。横を見ればピオニーが心地よさそうに眠っている。あと、臭いは、自分の香水の香りと……いや、臭いに関しては、深く追求しない方がいい。しかし、まだ残っているということは気を失ってからさほど時間はたっていないみたいだ。
 結局、何がそうさせたのか、今日は3ラウンドも付き合わされた。やはりご無沙汰だったのが原因か。それにしても、腰に力が入らない。同じ年寄りなんだから、もうちょっと気配りが欲しいとこだが、万年発情期の皇帝様には何言っても無駄だろう。
――これからどうしましょうかね……
 今すぐ抜け出して、執務室へ本来の目的を果たしに行くべきか、それともこのままここで朝を迎えるべきか……
 ちょっと考えて、すぐに後者を選ぶ。このまま執務室に行っても、疲れで思うように動けなさそうだし、何よりこの幼なじみの機嫌をとっておかなければ後が怖い。仲間たちがおかしな格好をさせられるのは面白いが、自分がするのは勘弁願いたかった。
 何故そう思うのかといえば、スパの会員証をもらった後、話しかけたメイドからは、アビスマンのコスチュームをもらうわ、スパでも水着が用意されているわ……まだ何かありそうで、いくらジェイドでも先が読めない。
 大人しく目を閉じて、睡魔を選ぼうとした矢先、背後から回されてくる手が……
「何だ、行っちまうって思ったのに」
「行って欲しかったですか?」
 あなたが望むなら、何処へでも行きますよ。
「いっそのこと閉じ込めちまうかな」
「寝言は寝てから言ってください」
あなたが望むなら、ずっと傍にいますよ。
「もっとお前のこと抱きたい」
「言いたいことはそれだけですか?」
あなたが望むなら、体ぐらい捧げますよ。
何故なら、自分は軍人だから。彼の言うことは絶対だから。「生きろ」と言われれば生きて、「死ね」と言われたら死ぬ。それが自分の仕事だから。
「もう寝ますから、離してください」
「やだ、折角の添い寝だし、このままが良い」
 触れ合う素肌が心地良いだなんて絶対言わない。
「暑苦しいじゃないですか」
 その熱さえも愛しいだなんて絶対認めない。
 大人になることがどれ程悲しいことなのか、あの頃の自分は考えもしなかった。ほかの事に夢中だったから。
「もう、戻れないんですね……」
 あの頃の、自分たちには……
「何が?」
「何でもないです」
 そっと目を伏せて、背後のピオニーに擦り寄った。
 ジェイドには彼がブウサギに思い出の名前をつける理由が、少しだけ分かった気がした。
                  END






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